電子帳簿保存法の猶予措置が2023年末までで廃止されます。
改正後の 電子帳簿保存法のうち義務化される電子データ保存について ご説明します。 前回 掲載した記事も 参考に見てください。 新たな猶予措置ができました。制度をよく知れば 特に大変なこともありませんので 安心してください。
目次
電子帳簿保存法について
3つの制度があります
3つの制度 | 場合 | 内容 |
電子帳簿・書類保存制度 | 事業者が利用したい場合 | 自己が電子的に作成した帳簿や書類をデータで保存できる |
スキャナ保存制度 | 事業者が利用したい場合 | 取引先から受領した領収書、請求書、書類を保存する代わり スマホ・スキャナでデータ保存できる |
電子取引データ保存制度 | 全事業者に義務化 | 電子メールなどで保存した取引情報は電子データのまま保存しなくてはいけない |
全事業者に義務化されるのは 電子取引データを保存するということです。具体的には電子取引データというのは 電子メールなどで送られてきた請求書等を電子データのまま保存するということです。
紙でやりとりしている資料を電子化することではありません。
2023年末までの電子取引は保存すべき電子データをプリントアウトして保存し、税務調査の際に提示・提出できるようにしていればいいです。
電子帳簿書類保存制度とスキャナ保存制度は利用したい事業者なので 、この制度を利用したくなければ、利用しなくてもいいのです。
電子帳簿・書類保存制度とスキャナ保存制度の利用したい人の例
1, 元帳を印刷して保存するのは、印刷時間もかかるし印刷した紙の量が多いので保管場所も大変だ。
2, 取引先から紙で受け取った領収書もたくさんあるので、これを電子で保存出来たらあとで見やすいし保管場所もすくなくなるな。
今年の10月からインボイス制度も始まり新しい経理方法になり慣れるまでは時間もかかります。 当面は全事業者に義務化される電子取引データを保存することを中心に考えられたらいいでしょう。
電子取引データ保存制度(全事業者がしなくてはいけない制度)
電子取引とは取引情報の授受を電磁的方式で行うこと
具体例
• 電子メールによる請求書や領収書をデータで受領
• インターネットのHPからダウンロードした請求書や領収書データまたはHP上に表示される請求書や領収書のスクリーンショット
• 電子請求書や電子領収書の授受にかかるクラウドサービス
• クレジットカードの利用明細、交通系ICカードの支払データ
• 特定の取引のEDIシステム利用
• ペーパレス化されたFAXで書面に出力しないで利用
• 請求書や領収書のデータをDVD等の記録媒体を介して受領
電子取引データのフローチャート
(出典)国税庁リーフレット「電子帳簿保存法 電子取引データの保存方法をご確認ください」
2024年以降の電子取引データ保存の新たな猶予措置(恒久措置)の創設
システム対応等の相当の理由により保存要件にしたがった保存を行うことができなかった事業者については新たな猶予措置が適用可
新たな猶予措置適用要件
新たな猶予措置適用要件 |
① 税務署長が相当の理由があると認める場合(手続き不要) ② 税務調査等の際に データを出力した書面(整然とした形式及び明瞭な状態で出力)を提示・提出 かつ データのダウンロードの求めに応じる ※ダウンロードの求めは今回の改正で加えられています。 |
参考:相当な理由は、システム対応が間に合わない、金銭的な理由でシステム対応が今後当分できない、柔軟な猶予措置が適用になります。
猶予措置を受けない場合の原則的保存方法
原則 | 内容 |
可視性の原則 |
①検索要件 ②モニター・操作説明書の備え付け |
真実性の原則(改ざん防止の措置) | 改ざん防止のために次の①から④のいずれかをしなくてはいけません
①タイムスタンプが付与されたデータを受け取る ②受け取ったデータにタイムスタンプを付与する(最長2月以内)(事務処理規定必要) (注2) ③データの受取・保存を、訂正削除履歴が残るシステムや、訂正できないシステムを使う ④不当な訂正削除の防止に関する事務処理規定を制定し、遵守する。 |
改ざん防止措置は①から④のうちいずれかですが②は事務処理規定が必要です。
(注2をみてください)
(用語の説明)
検索要件とは
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① 日付・金額・取引先で検索 ② 簡易な方法 a,bのいずれか a表計算ソフト等で索引簿を作成検索 サンプルは国税庁HPにあり b規則的なファイル名を付す方法 |
タイムスタンプとは
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電子文書の存在時刻を証明するもので総務大臣が認定しています。有料です。入力確認ができる時刻証明機能を備えたシステムにデータ格納してもタイムスタンプ付与に代えられます。 |
受け取ったデータにタイムスタンプを押す | 文書管理システムにいれる際にタイムスタンプを押す、通常は文書管理システムを使用する。取り込む段階でタイムスタンプが押される仕組み |
データの受取・保存訂正削除履歴が残るシステムの例
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データをアップロードして、受け取る側もそのプラットフォームでダウンロードする
保存だけでなく、授受もおこなう 単に弥生の証憑管理、streamed などの利用の保存だけでは要件に合致しないため事務処理規定が必要(注1) |
事務処理規定のサンプル
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※国税庁より参照 |
よくある質問
Q問14 電子取引で受け取った取引情報について、同じ内容のものを書面でも受領した場合、 書面を正本として取り扱うことを取り決めているときでも、電子データも保存する必要 がありますか。
A 電子データと書面の内容が同一であり、書面を正本として取り扱うことを自社内等で取り決めている場合には、当該書面の保存のみで足ります。ただし、書面で受領した取引情報を補完するような取引情報が電子データに含まれているなどその内容が同一でない場合には、 書面及び電子データの両方を保存する必要があります。
Q問38 エクセルやワードのファイル形式で受領したデータをPDFファイルに変換して保存 することや、パスワードが付与されているデータについて、パスワードを解除してから 保存することは、認められますか。
A 取引内容が変更されるおそれがなく合理的な方法により編集して保存されているものとして認められると考えられます。
Q問41 自社が発行した請求書データの保存について、当該データに記載されている内容が事 後的にわかるものであれば、データベースにおける保存でもよいでしょうか。
A 発行した請求書データの内容について変更されるおそれがなく、合理的な方法により編集 された状態で保存されたものであると認められるデータベースであれば問題ありません。
(出典)電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】国税庁
保存期間は 紙の保存期間と同じで7年間(欠損金の繰越控除を受ける法人は10年)です。
(注1)弥生の証憑管理サービスを利用しても事務処理規定が必要です。
手動で証票管理サービスに入れた場合は事務処理規定が必要です。入手からアップロードまでに改ざんの余地があるとみなされます。
弥生デスクトップアプリのあんしん保守サポートまたはクラウドアプリ利用者は追加料金なしで利用できます。
弥生会計を利用していなくても弥生の証憑管理サービスだけを利用することもできますが、会計事務所からの申込になります。
マネーフォワードでも同様なサービスがありますが、こちらはタイムスタンプが押されます。
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(注2)タイムスタンプを受け取った電子データにつける場合は、最長2ケ月で事務処理規定で事務サイクル(1ケ月程度)をきめプラス7日ならいいということです。
まとめ
電子帳簿保存法は 昔からありましたが 電子データの義務化は 2024年1月からです。全ての紙の書類を電子にしなくてはいけないと思い込んでいる方からの相談がきます。義務化されるのは、電子で受け取ったデータを電子で保存することのみです。
次回は具体的にどのようにソフトを利用すれは、検索方法としてエクセル管理簿を作成することなくできるかをご説明します。
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